■短歌と俳句の勉強法
短歌・俳句の入り口
そもそも短歌、俳句というのはいつ頃できたものでしょう?
私の授業ではまずここから入ります。
もちろん西暦何年の何月何日と、まるでだれかの誕生日のようにいうことはできませんが、
多くの小中学生は(あるいは高校生も)それを知りません。
それでいて「短歌は五七五七七。俳句は五七五。」これだけは知っています。
私は子どものころ短歌のほうが長いのにどうして「短い」という文字がついているのだろうと不思議に思っていました。
そこでしかたがなく、長いけど「短歌」なんだと無理やりに覚えました。
太陽は東から昇るというのを天才バカボンの「♪西から昇ったお日様が~♪」の反対だと無理やりおぼえたようなものです。
短歌ではまずわが国最古最大の歌集の書名を知っておかないといけません。
『万葉集』です。全20巻約4500首の歌が収められています。
続いて平安時代の『古今和歌集』などがあることも小学生レベルで覚えておく必要があります。
中学生レベルではこの3倍、高校生レベルでは8倍くらいの知識が必要です。
俳句では、小中学生はまず「江戸の三大俳人」を覚えましょう。
古い順に「松尾芭蕉・与謝蕪村・小林一茶」です。
それぞれがどんな俳句をつくったのか、どんな特徴があるのかも、何か参考になるものを見て
簡単に理解しておいてくださいね。

ここに「江戸の~」と書いたように俳句はこの芭蕉の時代に完成したということがいえます。
芭蕉は1600年代後半の人ですから、今から約350年くらい前の人です。
一方、短歌の古い作品は奈良時代ですから西暦700年代後半、今から1250年くらい前にできたものです。
それくらい時代に隔たりがあるのですが、小中学生は(なかには高校生でも)どっちが先にできたのかが分かっていません。
長さがちがうだけで同じようなものだと思っています。
途中の「連歌」などについてはすっとばして、まずは以上のことを覚えておいてください。
短歌俳句の学習法。
高校生にとって和歌は文法学習に最適だということを前回は書きました。
小中学生の進学塾では、今週は短歌、来週は俳句というように単元学習が行われることだろうと思います。
そこではまず季語や切れ字を学び、句切れや修辞法という基本を学習してから、いくつかの短歌俳句にあたって練習をします。
しかし、一週間に一度いくつかの短歌俳句を読んだからといって、それで短歌俳句が理解できるようになるわけではありません。
それでは、まるで日本に来た外国人が日本文化を学ぼうとしているかのような上っつらだけのさわり方です。
かといって、膨大な数の短歌俳句を一つ一つ学習する時間はないでしょうから、やはりいくつかを選んで学習するしかありません。
そこで私がお勧めするのは「暗誦」です。
まずは何度も声にだして読んでみて丸暗記してください。
切れ字がどうとか、体言止めだ、倒置法だなんていうのはその後からで充分です。
まずは慣れましょう。
こどもは暗記の天才
まずは暗誦してほしい俳句として私が厳選したものが33あります。
これを覚えましょう。
前回のメルマガにも書きましたが、33もの俳句を暗誦するというと生徒は
「エーーーーーーー!」と言います。「ムリムリムリ!」「できない~!」といいます。
「じゃ、5つだけ今やってみようか」といって、一つ目を私が読み、大体の意味をいってから
何人かの生徒に読んでもらいます。
ふるいけや かわずとびこむ みずのおと
ここでもたもた読んでいてはだめです。
3~5人くらいの生徒にスラスラ読んでもらいます。
この間、約1~2分。早い子はこれだけでもう覚えています。
そして次、2つめも同じようにして、3つめも同じようにして・・・5つが終了します。
大体の意味がわかったところで生徒にもう一度1~5まで読んでもらいます。
そして次にこれを丸暗記するために生徒にぶつぶついいながら何度も何度も自分で読んでもらいます。(このとき脳が活性化するのがわかります)
これは3分から5分で十分です。
では確認です。覚えたかどうかを確かめてみましょう。
確認の方法は指導者が最初の5音を言ってあげます。
たとえば「古池や」と。
そうするとそれに続けて生徒が「蛙飛び込む水の音」といいます。
このようにすれば、わずか5分で5つくらいは暗誦できるようになります。
この調子で次回の授業までにあと5つ、合計10くらいの俳句を暗誦してもらいます。
これを3回繰り返せば「暗誦すべき俳句33」はすべて終了です。
小学4年生でも5年生でもできます。
ちなみにこのとき暗誦したものは一生忘れません。
その点でもお勧めです。
こんな方法で、「覚えるべき俳句33」を覚えましょう。
いきなり33は多すぎるという人はまず10~15くらいでスタートしてください。
高校生の文法学習に短歌を利用しよう。
高校生にとって短歌は文法の練習に最適です。
何でもいいのですが、一例をあげると
思いつつぬればや人の見えつらむ夢と知りせばさめざらましを
古今集
有名な小野小町の歌です。
そこで質問です。
1 「ぬればや」は「寝ればや」ですが、「や」について文法的説明が
できますか?
2 「見えつらむ」の品詞分解ができますか?

3 「さめざらましを」は「覚めざらましを」ですが、
「ざら」「まし」を文法的に説明できますか?
4 この歌を解釈できますか?
高校生にとっては歌一首でこのように文法の練習がたくさんできるのです。
いろんな歌でこのように練習してみたらどうでしょう。
この質問1~4の正解はこのページの一番下にあります。
<小野小町の短歌について・模範解答>——————————–
思いつつぬればや人の見えつらむ夢と知りせばさめざらましを
古今集・小野小町
1 「ぬればや」は「寝ればや」ですが、「や」について文法的説明が
できますか?
→〔解答〕疑問の係助詞
2 「見えつらむ」の品詞分解ができますか?
→〔解答〕見え・・・動詞ヤ行下二段活用「見ゆ」の連用形
つ・・・強意(確述)の助動詞「つ」の未然形
らむ・・・現在の原因推量の助動詞「らむ」の連体形(係り結び)
3 「さめざらましを」は「覚めざらましを」ですが、「ざら」「まし」を
文法的に説明できますか?
→〔解答〕ざら・・・打ち消しの助動詞「ず」の未然形
まし・・・反実仮想の助動詞「まし」の連体形
4 この歌を解釈できますか?
→〔解答例〕 恋い慕いながら寝たので、あの方が夢の中にあらわれたのだろうか。
もし夢だとわかっていたなら目覚めなかっただろうに。
以上です。
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